Research Abstract |
本研究は, 中世から近世への移行過程を, 東海地域における検地や貢租などを中心とする基礎構造の側面から解明しようとしたものである. 具体的には, 研究代表者がここ10年近くの間, 本研究課題に関連して系統的に進めてきた諸研究を前提にして総括的に再検討し, 全体のまとめを行った. 以下, 補助金に基づく成果を箇条書にしてあげることとする. 1.補助金の交付は年度後半になったが, 各地の史料館・図書館などへの史料調査を精力的に行った. たとえば, 国立公文書館内閣文庫, 国立史料館, 和歌山県立図書館, 大阪府立図書館, 岡崎市立図書館などの調査を通じて, 新たにいくつかの知見を得ることができた. 2.東海地域に関係する図書の購入により, 研究をまとめるに当り大きな便宜を得た. また, 学生アルバイトによる徳川家康関係文書の整理および編年史料原稿の作成は, 今後の研究に大いに役立つものである. 3.東海地における中・近世移行期社会の基礎構造を総括的に明らかにするという課題のもとに, 研究史の整理からはじめて, とくに東海地域における近世社会成立の画期をどの時点にみるか, その成立過程の特質をどのようなものとしてとらえるべきかについて, 「東海地域における近世の成立」と題して, まとめの作業を行った. この成果は, 昨年9月に名古屋近世史研究会, 10月に静岡県地域史研究会で報告するとともに, 『地方史静岡』16号に投稿し, 本年4月上旬にも刊行されることになっている. 4.研究課題に関係する従来の研究成果を集大成し, 昨年12月に大阪大学へ文学博士学位請求論文として提出した. 今回の補助金による調査などの成果を基に, 今後さらに研究を深めてこの論文の手直しを行い, 2年以内に著書を刊行する予定である.
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