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¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1987: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
論稿としては, 僧尼令研究の基礎作業に当る「僧尼令准格律条集解諸注の検討」(姫路短期大学紀要33)が2月に刷り上った. 僧尼の科罪は俗律・僧尼令・仏律の三種においておこなわれるが, 当犯罪が上記三者のどれに当てるかについて(科罪手順や担当官等のことも含む)規定したのが第21准格律条であり, 奈良・平安時代の明法家が歴史的事象(違反例や格式等による変改等)を踏まえて条文解釈をおこなっている. ところが僧尼令集解中本条が最も難解で, 明法家諸注の解釈が錯綜として混乱を深めている感さえある. そこで拙稿ではこれら諸説の交通整理をおこなうとともに, 研究者の諸説で見解の相違が見られる若干の事例についても私見を提示した(大宝古令における告牒当規定文の所在の直接的指摘, 僧尼犯罪への赦規定は日本令には存在しなかった等). 現在「大宝僧尼令の成立と展開」について執筆中である. 既に昭和41年に「天武・持統朝の仏教統制」(史学研究96)と題して, 僧尼令が大宝律令において初めて成立したとする私見を提示してあり, この見解は徐々に研究者の間で承認を受けつつあるが, 当時は大宝以前の僧尼令の不存在を論証することに主眼があり, 大宝僧尼令の成立事情及び条文構成についての分析等に関し全面的展開はおこなっていなかった. そこで今回は大宝律令の成立事情との関連・先行法たる唐の道僧格の継受の詳細な異同の検証・養老僧尼令との相違点の意味理解等を柱として成立のプロセスを叙述し, 次いで大宝〜天平期の間の国家による仏教行政の在り方を, 僧尼令条文に照らしながら検討を加えていき, 僧尼令が奈良時代仏教の展開(地方寺院や僧尼の在り方や動向も踏まえ)に如何なる役割を担ったかを研明していく予定である. そして今後継続して, 養老僧尼令の展開課程の検討に入り, 最後に僧尼令法制の不能化の最終段階(寺院アジールの発生)まで論述を進めていきたいと考えている.
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