Research Abstract |
『南史』は唐初の李延寿が, 先行する『宋書』『南斉書』『梁書』『陳書』を刪約して編纂したものであるとされるが, 『南史』と先行する4書とを比較してみると, かなりの部分, 重らないところが存在する. つまり, 『南史』は『宋書』以下の4書を刪約する一方, 全く別系統の史料を同時に採用しているわけである. そこで本研究では, 1,まず『南史』と『南斉書』『梁書』とを読み比べ, 両者の記事の一致する部分と一致しない部分とを区別した. 2,同時に関連史料(『健康実録』『資治通鑑』及び『北堂書鈔』『初学記』『芸文類聚』『白氏六帖事類集』『太平御覧』『刪府元亀』等の類書, 『通典』『通志』等の政書など)を博し渉猟し, 関連すると思われる史料を収集した. 3.上記1で区別した記事のうち, 『南史』にあって『南斉書』『梁書』にない部分を採り上げ, それらと同じ記事(あるいはそれらと同一の史料をソースをもつと思われる記事)を, これら2の史料中から捜採した. その結果は(『宋本紀』の部分においては, 『南史』は『宋書』以外に, 『宋略』(裴子野撰)を主要な史料として併用していたことをすでに明らかにし得たと思うが), 斉本紀・梁本紀の部分においては, 類書等からかなり同文, もしくは同系統の史料に属すると思われる文を採取し得たが, しかし, それらが何という史書であるかを特定し得るまでには至らなかった. たとえば, 梁代のことを記述したと伝えられる史書には, 『梁典』(劉〓撰・何之元撰)『梁撮要』『梁跡略』『梁太清紀』等があるが, 類書などから採取した史料では, それらの史書のいずれとも特定し得ない状況である. ただし, そういう典拠が確実に存在すること, また, その一つが志怪小説風のものであると思われることはほゞ確言し得よう. 今後は類書のみならず, 文集その他に範囲をもっと拡げて博捜しなければならないと考えている. また次年度には陳代もまた対象としてとりあげたい. 研究の成果はその時点でまとめられよう.
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