Research Abstract |
本研究は, 西ドイツにおける休暇制度の歴史と現状を我国との比較において分析することを目的とするものであった. 一年にわたる研究の結果, およそ以下の事がらが明らかになった. (1)ドイツおいては法律に根拠をもつ休暇制度は1873年帝国官吏法より見られるが, 1918年までは休暇の権利をもつのは官吏と職員に限定され, その日数もわずかであった. 休暇制度の本格的発展はワイマール時代の労働協約によって開始され, それはナチス時代にも中断されることなく継続する. さらに, 第二次大戦以後, 休暇制度は世界的な時間短縮運動や人間の尊厳理念の浸透などにより大きく促進され, その日数も大幅に増加していった. 1963年に成立した連邦休暇法によれば, 最低休暇日数は18労働日であるが, ほとんどの労働協約がその水準を上まわっており, 大部分の労働者が4〜6週間の休暇を傍受している. (2)休暇制度の重要問題の一つは, 休暇の取得時期である. わが国では年休の未消化が多い一つの理由は, 取得時期の指定が各労働者に委ねられている点にあるといわれている. この点, 西ドイツの法制度および実態は以下のような特徴をもっているといえる. (a)法律によって連続休暇が原則とされていること, (b)年度内消化の原則が法律に明記されていること, (c)大部分がいわゆる計画年休であり, 計画の方法は, 経営の実情に応じて, 全員一斉休暇, グループローテーション, 個人別ローテーションなどがあること, (d)計画の作成にあたって個人の意思を尊重すべきことが法律上明記されていること, (e)計画政策にあたっては経営協議会が決定的な役割を果たしていること, などである. わが国でも, 改正労基法によって計画年休の制度が導入されたが, その運用にあたって西ドイツの実務から学ぶべきものは多い.
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