Research Abstract |
昭和61年・62年の両年度にわた, 当補助金の交付を受け, 「日本および西ドイツにおける行政刑法の理論と現実」というテーマに関し, かなり広く両国の文献・資料を系統的に調査・収集するとともに, 歴史的・比較法的な研究を行ってきた. ただ, 行政刑法の領域は広範囲にわたり, 研究すべき課題も多方面にわたる. そのため, 今回の私の行政刑法研究は, 従来の私の問題関心であった刑法思想史の観点から, さしあたり行政刑法における不作為犯(真正不作為犯および不真正不作為犯)に焦点をしぼって, 日本および西ドイツ(戦前ドイツを含む)における理論につき検討してきた. この研究成果は, 名古屋大学の「法政論集」に近く掲載する予定である. この論文では, 前述したような観点から, 日本および西ドイツにおける行政刑法における不作為犯の問題性を明かにしたものである. ここでは, 行政刑法の領域こそ, それぞれの国の国家社会の特徴や問題性を端的に示すが, とくにその「ファシズム期」や戦時期には, この領域が異常に拡大し, 近代刑法の基本原理や論理が著しく空洞化させられることを, 不作為犯の理論や実定法について分析・検討した. しかし, 行政刑法について, 今後, ひきつづき研究すべき課題も多いので, 当補助金の交付を受け, 収集した文献・資料を分析・検討し, その成果を公表する予定である. とくに, 行政刑法と保護法益について, わが国の実定法を対象として研究すべく, 準備をすすめている.
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