Research Abstract |
研究代表者は従来, 救貧法史を一つの中心としてイギリス社会政策の研究を進めてきたが, 昭和61年度からは特に現代福祉国家のかかえる諸困難の原因を探るべく, 両大戦間期の社会政策・経済政策立案の諸潮流を跡づけ, また1950年代以降の社会保障改革の焦点を浮き彫りにするなどの作業をおこなってきた. こうした作業の成果は, 研究代表者が編者の一人となってとりまとめた比較研究(廣田功・奥田央・大沢真理編『転換期の国家・資本・労働』東京大学出版会, 1988年2月刊)として, その一端が発表されたところである. 以上の過程で, 社会政策の比較研究に際して不可欠の基本的概念, 方法論について識見を積むことができたと考える. そこで本研究においては, まず戦後日本の社会保障史の整理をおこない, 特に1980年代の動向については, 広い意味での関連分野のそれを含めて, 詳細な年表を作成しつつある(補助者を得て新聞切り抜きを作成し, それにもとづく『福祉の日誌』(仮題)をまとめつつある). 他方で, さしあたり官庁統計, 自治体資料などを手がかりとして近年の国民生活の実態を具体的に把握することに努め, まず東京都についての基礎的分析結果を発表した(大沢真理「ゆとり」の不平等」, 『日本の科学者』1987年5月号). なお本年度は札幌市に出向いて福祉行政の調査・資料収集をおこなったが, この調査を通じてわが国の社会保障・福祉を解明するうえでの一視角を獲得しえたと考える. 特に福祉政策と労働政策との接点ともいうべき「人事院勧告」制度の問題点につき, 共同執筆論文としての制約のもとにではあるが, 事実発見とともに私見を発表する機会を得た(西田美昭・大沢真理・佐口和郎「大学教職員賃金を通じて見た人勧制度の問題点」, 『日本の科学者』1987年12月号).
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