Research Abstract |
近代工業生産システムは, 大量生産システムを要請する. 食品産業においても例外ではない. 他方, 食品は, 消費の個別性, 多様性, 零細性を最も強く有する. 生産システムと消費システムとの矛盾が存在する. 食品という商品的特性に加えて, このことが反映されて, 生産の側では, 基礎的素材型と加工型の業種で産業構造が異なり, さらに, 後者においても中小企業の占める割合が他産業に比較して多いといえる. これは流通過程をも規定する. ところで, 食品産業は, 現在, 幾つかの課題とそれへの対応を迫られている. 課題としては, 需要構造の変化, 国際化, 原料問題, 技術およびこれらを取り囲む情報化の諸問題である. これらの課題への食品産業界の全般的に共通する対応としては, 食品の加工食品化であろう. 事実, 食費に占める加工食品の割合は年々増加しており, 年収五分位段階階級別年間・一世帯当たり加工食品異存率では年収の低い階級ほどその占める割合が大きく, さらに, 都市階級別年間一世帯当たり加工食品異存率では小都市ほど多い. 加工食品は, 今後, 国民生活の中で量的にも質的にもますます大きな位置を占めて来るだろう. これは, 加工食品の国民生活への影響が重大であることを意味する. ところが, 加工食品の使用価値的側面および価値的側面の研究は未だ十分に行われていないことがわかる. 現代のコンシューマリズムないし消費者運動は, まさにこの点に焦点をおいている. 確かに, 特に加工食品大企業は, それ自体を食品文化を創造する経営組織体として性格づける傾向が増大しているが, 内容において未だ不十分である. 他方, 生活協同組合およびその連合体(日生協)も, 同様に食品文化を創造する経営組織体として, 加工食品大企業とは異なった経営活動(商品開発体制を含む)をしており, 両者の活動は, ある意味で対照的である. この対照性を基軸にしながら, 人類史的生活者的観点から研究を展開できた.
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