Research Abstract |
対流局に対する回転の影響を調べる前に, ベースとなる対流層の構造をおさえる必要があり, 以下の様な考察を行った. 太震学からわかっている, 深い対流局を与えるモデルとしては, 局所モデルの場合, 混合距離を大きくせねばならず, その場合には非局性が無視出来ない. 非局所混合距離理論として, 最も完成されているものは, 中国の熊氏によるものである. この理論は乱流速度の自乗平均, 温度ねらぎの自乗平均, 両者の相関の3変数に対して各々2階の非線型連立微分方程式からなる. 通常の精度の良い差分で解を求めようとしたが, 数値不安定を示し, 収束解が得られず, 前進差分, 後退差分の混用で解を得た. 結果は, 対流局の底に熱溜めが作られ, 準断熱的になる. そこで, 適当な式の変形と, 境界条件の組み入れ方に工夫をする事で, やっと正常な収束解が得られた. それによれば, 熱溜りは発生せず, それを解消する様に深い対流局モデルに移行した. そこで問題になるのはLiの問題である. 観測によれば, 太陽Liの存在量はかなり消滅しているが残存している. 得られた対流局モデルでLi元素の破壊局への拡散による滅少を調べたが, 短時間で残存もなく壊棄してしまう. そこで考えられるのは, 対流局の性質として重い元素を下局へは拡散しにくい性質があると予想して, 従来考えられた事のない, 対流局の圧力効果によって, 元素拡散へ抵抗が働くと考え, 定式化した. その結果, 抵抗値は圧力ゆらぎと速度の相関に比例する事がわかった. この事は, 圧力が高い下局へは元素拡散しにくく, 圧力の下がる外局に拡散し易い事を意味している. この結果は, 青色巨星内の元素分布や, 1987A超新星の親星の円部構造にも関連した結果と考え, 国際会議で発表した.
|