Research Abstract |
電気抵抗と温度の測定時間を短縮し, 精度を上げる為, パソコンとディジボルを購入し, SQVIDと組合わせて測定の自動化を図った. しかし, 温度可変型SQUID用クライオスタットが未完成なので, 温度依存のデータは未だ得られていない. そこで, 本年度は4.2Kでの結晶粒界による電気抵抗と粒界構造の相関について予備実験よりさらに詳しく調べた. その結果, 次の事項が新しく得られたり, 確証された(帯精製Alについて). 1.双晶境界の電気抵抗は粒界面方位に強く依存し, 面方位が{111}の整合双晶境界の比抵抗は1.4×10^<-17>Ωm^2で非整合のそれより一桁も小さく, 積層欠陥のほぼ半分である. 2.結晶粒界の比抵抗Pgbは傾角θ, ねじり角φを用いて次式で表される. Pgb=Asinθ/2+Bsinφ/2. 係数A, Bの値は, 一般粒界では回転角Wが22°以下と28°以上では異る. W≦22°ではA=1.8×10^<-15>Ωm^2, B=16×10^<-15>Ωm^2, w〓28°ではA=0.72×10^<-15>Ωm^2, B=1.1×10^<-15>Ωm^2である. すなわち, 回転角が22°と28°の間に抵抗の遷移領域がある. これらの値から, 粒界中の転位の比抵抗Pαは, 刃状転位のそれをPα(edye), らせん転位のそれをPα(screw)とすると, w〓22°の小角粒界ではPα(edye)=2.6×10^<-25>Ωm^3, Pα(scew)=2.3×10^<-25>Ωm^3と求まり, 結晶粒内の転位の比抵抗の測定値とほぼ等しい. これは, 少なくともw〓22°の小角粒界の大半は転位による伝導電子の散乱から生じることを示している. さらに, 転位の抵抗には長距離にわたる歪場は関与しなく, 転位の抵抗は転位芯近傍での電子の散乱から生じることも意味している. また, w〓28°の大角では, Pα(edge)=1.0×10^<-25>Ωm^3, Pα(screw)=1.6×10^<-25>Ωm^3という小角での値より小さくなり, 大角での転位芯の重なりに対応する. 以上のことは, 今までに小角粒界にしか適用できないと言われていた転位モデルが大角一般粒界でも成立する事を示す.
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