Research Abstract |
金属錯体の分子量決定やイオン構造解析のため, 高速中性原子衝撃イオン化法と二連結質量分析法を用いた研究を行ってきたが, 最適のマトリックス・溶媒・添加物等の選択が困難で十分な成果があげられなかった. そのため, 今回の補助金で, 高マス側の感度向上のため, 日本電子製の後段加速検出器を購入, 設置した. これにより, ほぼ, 正イオンで感度ほぼ5倍, 負イオンでほぼ3倍の感度向上を達成した. 研究をおこなった試料としては, (1)グリセロール(G)とアルカリ金属ハロゲン化物(AX)との混合物のFABMSおよびTMSの測定結果より, G, G-H+A, AXの3種の分子種のA^+イオン親和力の大小関係を, 初めて決定した. A=Li, Na, K, Rb, CsおよびX=F, Cl, Br, Iの場合の大小関係において, イオン半径比(A+/X-)によって3種類に分類されることが判明した. また, その関係の意味するところを, イオン構造解析, 特にアルカリ金属イオンの配位位置の決定により明確にするべくモデルを検討中である. 一方, (2)グリセロールとアルカリ土類金属塩化物(BX2, B=Mg, Ca)の混合物とのFABMSの特徴的なイオンのMS/MSスペクトルより, Bイオンの配置位置を決定した. さらに, 分子量決定がほとんど不可能なアミノ酸錯体の研究のために以下のような検討を行った. (3)20種のアミノ酸と種々の塩化物の混合系について, FABMSとTMSとを測定した. 特に, この場合, TMSの測定は通常の測定の強度の1/100以下であり, 絶対イオン量・脱質量数の正確な決定ができなかったが, 高段加速検出器が備わったため, 改善され, 今後の測定が期待される.
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