Research Abstract |
1.1, 3-プロパンジチオールを出発物質とし, 二段階を経て1, 4, 8, 11-テトラチアシクロテトラデク+6-オール(TTCT-OH)を合成し, さらにアリル, ベンジル及びプロピルフエニルの臭化物と反応させて目的物, TTCT-O+Allyl, I, TTCT-O-Benzyl, II, 及びTTCT-O+Propyl Phenyl, IIIを合成した. 2.試薬I, II, IIIを用い, クラスb金属を主体としたCu(I), Ag(I), Pd(II), Hg(II), Rh(I), Au(III), Pt(II)等の抽出挙動を調べTTCTを用いた場合と比較した. 側鎖にΠ電子を有するPd(II), Hg(II), Rh(I)の抽出率は母体のTTCTよりも増大し, クラスb金属の抽出における選択性をさらに大きくするという結果になった. 特にIIIを用いた場合には高い抽出能を示した. Pd(II)についてTTCTでは抽出率が14.3%であったのが試薬I, II, 及びIIIでは, 35.0, 66.0及び95%となりHg(II)及びRh(I)についても同じ傾向がみられた. Cu(II)については明らかな傾向を示す抽出率の変化はみられなかった. これらの結果は従来のチアクラウンエーテルのもつ金属イオンと配位原子の親和性及び内孔径と金属イオンの大きさと適応性という特性に加えてソフトな金属に特有なΠ電子の関与する錯形成反応を行なっていることを示すものと考えられる. 試薬IIよりも, より長い側鎖をもつ試薬IIIでの抽出率が高くなるのはキャップドチアクラウンとしての立体的な有効性が考えられた. 3.TTCT-OHと出発物質として2個のピクリルアミノ基をもつベンゾイル基を導入したTTCT-O-(3, 5dip NH)-Benzoyl IVを合成した. 4.試薬IVは解離し得るプロトンを2個もち, 発色団としてのピクリルアミノ基を2個もち, 側鎖のベンゼン環が金属イオンをキャップすることなどから考えて2価b金属の溶媒抽出吸光光度定量試薬の可能性を期待したが, 溶媒抽出の結果はAg(I)及びCu(I)の選択的試薬として有効であることが明らかとなった.
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