Research Abstract |
イオン会合体の形成のし易さを, 陽イオン, 陰イオンの形状のミクロ的観点から検討し, 高機能性イオン会合試薬の設計と合成, そして実際的有用性について研究を行った. まず対陰イオンとしてアゾ系染料を9種類合成し, 17種類の対陽イオン(中心に窒素原紙をもつもの11種, リン原子をもつもの4種, ヒ素, イオウ原子をもつもの各1種)とのイオン会合抽出平衡について検討した. 装置は高速攪拌装置に, 送液ポンプ, 吸光度検出器, 記録計, データ処理装置をつけたものを組立て, 迅速な測定を可能とした. 153個のイオン会合体について, 抽出定数, 分配係数及びイオン会合定数を求めた. これらの測定データを基に, (1)陽イオン試薬における中心原子の大きさによる抽出性の違い, (2)中心原子に結合している基の抽出性への寄与, (3)陰イオン試薬におけるスルホン基の位置による抽出性の違い, (4)陰イオン試薬における置換基の抽出性への寄与, に関する知見を得た. これらの知見を基に, イオン会合体の抽出性の尺度を推算する計算式を提案し, この計算値と実測値とがよく一致することを示した. さらに, 新しい機能性イオン会合試薬としてアゾ系試薬21種を設計し, 合成を行った. これらアゾ系試薬の性能についても実際に第4級アンモニウムイオンとのイオン会合抽出を行って確認し, また基礎的データとして酸解離定数, 光吸収特性についても検討した. 本研究の成果は高感度, 高選択的機能をもつイオン会合試薬の設計の基礎となる知見を与えると共に, 実際に分析化学で定量に用い得る新しい試薬の開発が行われたことである. 本研究で得られた試薬設計思想に基づき, ピリジルアゾアニリン系, トリフェニルメタル系試薬の設計と実際に行っている. また, イオン会合体のミセル抽出にも応用し, 溶媒抽出で得られた平衡論的概念が同様に適用できることも示し, イオン会合の分析化学的な新しい境地を開拓することができた.
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