Research Abstract |
金属に対して, 呈色錯体(MLn)と無色錯体(MA)を形成する二種の配位子(L,A)を競合させ, 呈色錯体の吸光度の変化を測定して錯体種の解析を行った. 新たに購入した分析用電子天秤やpHメータは, 高感度呈色試薬の微量秤量や酸解離定数の決定などに用いられた. 以下にその結果を報告する. 1.希土類元素と2-(2-チアゾリルアゾ)-4-メチルフェノール(TAC,L)および18クラウン6(18C6,A)との錯体. 実験は, [H^+]とイオン強度を一定としたメタノール溶液を用い1:1錯体, MLを生成する条件([M]>[L])で, L,Aの競合反応を行わせた. [A]の変化に伴う1/K_<ML'>(KML'=MLの条件生成定数)をプロットした結果, MA(1:1)錯体の生成を確認し, 直線の切片と傾斜から各錯体の生成定数K_<MA>,KML'を求めることができた. KML'の値は, 別にし単独の条件で求めた値とよく一致し, 本法の妥当性を示した. またKMAは, 希土類の原子番号の増加とともに減少することから, 呈色試薬による希土類の個別定量において, 18C6が有効なマスキング剤となる可能性を示した. (分化第36年会講演). 2.亜鉛および希土類元素の2-(5-ブロモー2-ピリジルアゾ)-5-(N-プロピルー3-スルホプロピルアミノ)フェノール(5-Br-PAPS,L)錯体. 高感度呈色試薬である5-Br-PAPS(L,ε_<ZnL2>=1.3×10^5M^<-1>cm^<-1>)に対して, 競合する配位子(A)としてZnの場合ニトリロトリ酢酸(NTA)を, 希土類の場合イミノジ酢酸(IDA)とシュウ酸とを用いた. 実験は, [L]≫[M]の条件で[A]の増加に伴うMLn'の全濃度の減少量を測定し, グラフ上の解析から錯体種の組成を調べた. その結果, pH7〜8の領域においてZnではほとんどML2錯体のみであるが, 希土類ではMLとML_2錯体とが共存していることが判った. 1:2錯体の生成定数KML2は, Znの場合既知のK_<MA>(A=NTA)の値を, 希土類の場合KMLの値をそれぞれ用いて決定することができた. すなわち, MLが共存する場合には, K_<MA>は未知のままでよく, 実際に異なる二種の配位子(A), IDAとシュウ酸を用いて求めたKML_2の値はよく一致した.
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