Research Abstract |
1.(1)PdCl_2(Phcn)_2のC6H6溶液に窒素下, 当量のMeSCH_2SMe(以後S-S)を反応させると不溶性の黄色錯体, PdCl_2(S-S)(a)が得られるが, これにさらに当モルのS-Sを反応させると可溶化し, その溶液からPd(S-S)_2(b)が単継された. (b)は溶液中動的な挙動を示すが, -50°Cでは固定化され, 1HNMRにおいて2本のメチルシグナルが観察された. また, 分子量測定(CH_2Cl_2)から単量体であることが判明したので, 配位子S-SはそれぞれPd中心に単座配位していると考えられる. (2)別途合成したPhSCH_2SPh(S′-S′)を用い, CH_2Cl_2中での同様な反応で, S-S単座配位の錯体, PdCl_2(′S-S′)_2が得られた. 2.PtCl_2(Bu^tCN)_2を出発錯体として用い, Pdの場合と同様にしてS-S, S′-S′と反応させ, それぞれ1:1および1:2錯体を得た. Ptの場合の反応はより長時間が必要であった. また, S′-S′の場合には還流温度(C6H6)が必要であった. PtCl_2(S′-S′)錯体は1:1錯体では唯一可溶性で, 分子量測定の結果二量体構造をとっているものと思われる. 3.1で単離したPd(II)錯体(a)に窒素下, CH_2Cl_2中, -60°CでPd(0)錯体, Pd_2(dba)_3・CHCl_3(dba=ジベンジリデンアセトン)を反応させ, 反応後の溶液を低温で処理したのち, 赤紫色固体として, Pd(I)二核錯体, Pd_2Cl_2(S-S)_2(c)を得た. cは固体状態では空気中, 室温で安定であるが, 溶液中では不安定で容易に分析する. 温度可変1HNMRの測定をしたところ, -50°Cではメチル, メチレンシグナルがそれぞれ2本づつ観測され, 固定したスペクトルが得られたが, -30°Cではまずメチレンシグナルの合体がみられ, 次いで0°Cでメチルシグナルが合体することが明らかになった.
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