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¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1987: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
真核生物の鞭毛におけるすべり-屈曲変換機構を研究する目的で, ウニ精子の鞭毛運動に対するpHの急速降下の影響を, ビデオ顕微鏡と新たに開発したpHジャンプ法を用いて調べた. トリトンで脱膜した精子をATPと酢酸カリウムを含む再活性化液中で再活性化した. この精子を含む再活性化液を, カバーガラス下面に張り付かせたリング状のミリポアフィルターの穴の部分に薄膜状におしひろげた. このカバーガラスを, スライドガラス上のコの字型のシリコンゴム製のスペーサーの上に置いた. 酢酸水溶液をスライドガラス上に置いたろしに滴下すると, 酢酸蒸気がスライドーカバー間の間隙に拡がり, さらに再活性化液に溶けこむとともに, 再活性化液のpHが急速に降下した. この時, 鞭毛運動の急速な停止が観察された. 鞭毛運動停止には, pH降下以前の屈曲波形を保ったまま"瞬間的"停止するものと(波形凍結), カルシウム誘導性の鞭毛静止特徴的な杖型屈曲で静止するもの(枝型)が区別できた. pHを元に戻した場合には, 正常な鞭毛運動が回復したが, 低下したままに放置すると, 鞭毛は微小管のすべり運動によって崩壊した. このことは, pH急速降下による鞭毛静止がすべり-屈曲変換の阻害によるもので, すべり運動そのものの抑制によるものではないことを示している. 杖型静止のビデオ記録を詳細に解析した結果, 静止時に鞭毛基部に残る屈曲には, 正常鞭毛運動時の主屈曲に相当するもののほか副屈曲に相当するものもみられることが明らかとなった. このことは, pH急速降下によってすべりの切り替え機構が抑止されたことを示している. 従って, この研究によって, 鞭毛運動の機構のうちのすべりの機構とすべり屈曲変換機構を分離して研究する路が開かれたと言える.
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