Research Abstract |
通常の野外地質学では, 調査結果を現地で野帳につけ, 宿舎でデータ整理を行い, 翌日からの調査計画を立案する. この調査の過程で新しい発想を思いついたり, 法則性を発見したりする. この場合, 調査者の地質学に対する知識の多寡や自然を見る洞察力の鋭さが大いにものを言う. そこで, 熟練者の勘に代ってコンピュータがヒントを与えてくれると, 初心者には助かる. しかし, 従来, 地質学の分野では, コンピュータは単なる高速計算機か, あるいは調査完了後のデータ整理や結果の図化など, プレゼンテーションの手段としてしか利用されて来なかったと言ってよい. 今回の研究では, 視点を変え, コンピュータを野外地質学の分野で, 現地で活用することにした. まず第一の例では, シラスの崩壊調査に多変量解析の手法を応用し, 崩壊に寄与する要素を毎日現地で点検した. その結果, 調査の早期から, 特定の要素の重要性が見出されたため, その要素については翌日からの観察がより細かくなったし, あまり寄与しない要素については, 調査を省略し省力化がはかられた. 第二の例では, 地質学科出身でない土木技術者に, シラスか否かの判別法を教授するのに, 人工知能の手法を応用した. 地質家が, 長年の教育と経験により, 一目で判別できるものでも, 素人には難しい. いくつかの着目すべき要素を質問して観察させれば, 比較的容易に正解にたどりつくことができた. これも野外にコンピュータが進出した成果であり, 野外観察への応用と言えよう. 第三の例では, 断裂解析から古応力場を復元するのに, 野外でのデータ入力から応力場の算出と図化, あるいは形成時代にによるフィルタリングなど, 一切自動的に行うトータルシステムを開発した. また, こうした野外でのデータを収録するためのデータベースのフォーマットの試案も作成した.
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