Research Abstract |
MHD発電は, プラズマを用いた高効率発電方式として各国で研究が進められているが, 電極の寿命が, 実用化の上での最大の問題点となっている. 特に, 最も実用に近い石炭燃焼MHD発電では, 石炭スラグ層が電極上を覆うため, 放電構造の根本的な把握とともに, 主としてアーク発生による電極の熱電気化学的な損傷機構の解明が重要な課題となっている. 本研究では, スラグ層を伴う電極の長寿命化のための指針を得ることを目的として, 熱的電気的および化学的な性状が既知の人造スラグ層(PbO-SiO_2系)を金属電極(SUS,Cu)上にプール状に形成させて通電実験を行い, 陽極および陰極それぞれについて, 均一放電から微細アーク放電を経て巨大なアーク放電に至る放電挙動, さらに, これらのアークが発生する限界電流密度とこれに及ぼす電極温度, 電極材, スクグ組成などの影響を明らかにした. また, アーク放電時における電極の損傷状況の顕微鏡観察を行い, アークスポット部の侵食に及ぼす諸因子の影響について検討を行った. 主な結果を以下に示す. 1.陰極においては, 明確な均一放電, 微細アーク放電, 巨大アーク放電の各領域が存在するが, 陽極では, 明確な微細アーク放電領域が存在しない. 2.スラグ層を伴う陽極上での電流集中は, 熱電気的不安定に起因し, 電極温度が高い場合は, 電流集中がプラズマ境界層内の低導電度層内に発生するため, 限界電流密度はスラグ層表面温度に支配されて電極温度に依存しないのに対し, 電極温度が低下するに従い, 電流集中がスラグ層底部に発生するようになり, 限界電流密度が急激に低下する. 3.アーク発生による電極の損傷は, 陽極では巨大アークによる電極後端部に集中するのに対し, 陰極では電極表面上にスポット状に生じ, その径は, 電極温度の低下とともに大きく深くなり, 数は減少する.
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