Research Abstract |
本研究は建物の寿命をモデル化により推定することを終極の目的とするものである. 今回は, その一環として, 木造住宅の平均寿命と地域性の分析, 非木造建物の新築年次別の現存棟数・滅失棟数の実態調査を行ない, その寿命に関し分析をしたものである. 木造住宅の平均寿命と地域性の分析については, 次のような成果を得た. すでに調査済の人口5万以上の176都市の経過年数別滅失率により, 各市の平均寿命を生命表関数(人口論)・累積ハザード法を採用して推定した. ここでは, 高年代においてデータが存在しない都市が多いので, 主に後者により分析をした. 後者の結果は, コーホートの50%残存を平均寿命とすると, 北海道・東北39・1年, 関東37・4年, 甲信越・北陸48・4年, 東海41・9年, 近畿50・7年, 中国・四国46・8年, 九州・沖縄46・1年である. また, 住宅寿命の地域性は, (1)住宅寿命による地域分類は数量化4類を適用して分類すると, 北海道・東北, 関東, 中・西部日本の3地域ブロックに分類できる. (2)高年代現存建物(経過年数50〜70年)の割合が大きい都市ほど寿命は長くなる傾向がある. (3)住宅の面積や持ち家率の大きい都市ほど寿命が長くなる傾向がある. (4)その一方では, 人口が大きく, 借家の多い都市では寿命が短くなる傾向も見られる. 非木造建物の新築年次別の現存棟数・滅失棟数の実態調査と寿命に関する分析については, 次のような成果を得た. 調査対象都市は秋田市, 川口市, 高崎市, 堺市, 那覇市の5都市. 建物の種類はRC・SRC・S造の事務所・住宅の6種である. 各種建物の経過年数別滅失率の実態を明らかにすると供に累積ハザード法を援用して寿命の推定を試みた, 減価償却における耐用年数65年より若干小さい傾向が見られた. 今後, 分析結果の精度を上げるためにはさらにデータ量を増加する必要があり, 全国県庁所在都市へ調査を依頼中である.
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