Research Abstract |
Nb_3Snは現在12T以上の磁界を発生できる唯一の実用超電導材料であり, TiあるいはTa添加により高磁界における臨界電流密度(Jc)改善がなされている. このJcの改善は主としてNb_3Sn臨界磁界(Hc_2)の向上のためと考えられているが, JcはHc_2のみでなく組織, 組成にも強く依存する. このため, 本研究では, TiおよびTa添加の効果を確認し, さらにHc_2に強く影響する因子としての臨界温度(Tc)のインダクタンス法による精密測定, 生成Nb_3Sn層の組成分布等の組織観察により, Nb_3Snの高磁界特性改善機構を明らかにすることを目的とした. 研究の経過および実績は以下の通りである. 1.Nb, Nb-0.5, 1,2wt%TiおよびNb-6,10,15wt%Ta合金をアーク溶解, 加工, 熱処理後銅管に挿入し, 線材およびテープ材に加工した. 2.TiおよびTa添加による高磁界でのIc特性を確認するため, Ic評価技術確立のため日・米・欧等の国際共同研究で用いられている線材を使用し, 24Tまでの高磁界でIc測定し, TiおよびTa添加はほぼ同等にJc特性を改善し, Hc_2も25〜26Tであるが, 無添加材は高磁界特性も悪いうえバラツキもある. 3.インダクタンス法によるTcの精密測定を行うため購入したLCRメータの調整と急速に進展した高温酸化物超伝導体のTc測定のため, 室温から液体窒素温度で測定できる装置をつくり研究した. 現在はヘリウム温度まで測定できるクライオスタットを製作中で, 今後, アーク溶解後加工して作った材料でTcの分布を測定する計画である. 4.Ti添加および無添加Nb_3Sn多芯線でSEM, TEM, 分析電顕観察した. Nb_3Sn粒は0.1〜0.3μm, Nb_3Snはブロンズ界面近くでは等軸晶だが, Nb界面近くでは柱状晶, 添加TiはNb_3Sn中に固溶し, ブロンズマトリックスには残らない等を明らかにした. 今後, アーク溶解後加工した材料での研究を継続する予定である.
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