Research Abstract |
Cis-ジアシングクロロ白金(II)(シスプラナン)は, 膀胱癌, 睾丸腫瘍, 卵巣癌などに対し, 幅広い制癌スペクトルを示すことが知られ, すでに実用に供されているが, 副作用も強くその軽減化が望まれている. 本研究では, 脂溶性, 親水性のバランスをもたせた2-アルキルー1, 3-ジアミノプロパン系配位子の白金錯体で, 優れた制癌性と, 毒性の軽減化が認められたことに着目し, その基礎研究とポリビニルアミン(PVAm)への適用について検討した. キャリヤグループの長鎖アルキル基単位をn=1〜8として一連の白金錯体を合成し, DBA/2系雌性マウスで継代したア.388白血病細胞への投与効果を延命率T/C(%)を尺度として検討した. その結果, nが増大すると毒性は低下するが, T/C値も低下し, 親水, 疎水バランスを化合物に適当にもたせることにより, 実用に供せる制癌剤が開発できる可能性が示唆された. n=3.4が最も効果的で, 3mg/kg投与で, T/C(%)>200を示し, 毒性の尺度となる体重軽減も少なかった. 次に, 薬効の持続性の向上, 毒性の軽減を目的に, 〓〓250000のポリビニルアミンに塩化白金酸カリウムを反応させ, ポリマー上にシスプラチン構造を形成させた. P388白血病細胞への効果は, ポリマーではほとんど見られず, また毒性もなかった. これは, ポリマーの重合度が大きいために, 癌細胞内に薬物が侵入しないものと考えられる. さらに, 重合度を1000にしても同様の結果となった. 今後, シスプラチンユニットをスペーサー上につけたポリマードラッグ, 接合部が加水分解しやすいエステル結合をもつポリマー等を積極的に合成し, 連鎖に癌細胞と親和性のあるドメインを形成させることにより, 薬効の向上をはかっていく研究を行う予定である.
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