Research Abstract |
1)N-sulfonate型麻痺性貝毒の自然界における分布:世界各地で毒化二枚貝を集め, 液体クロマトグラフで毒組成を分析した. 渦鞭毛藻Gymnodi niumcatenatumで汚染したスペイン, オーストラリア, 山口県の試料には75〜90%の高濃度でN-sulfonate型毒が含まれていた. しかし, その内訳はスペイン, 山口産がgonyautoxin V,VI(GTX5,6)を主成分とするのに対し, オーストラリア産試料ではその大部分がC1〜C4毒で占められるなど地域によって明瞭な差異が認められた. 一方, Protogonyaulax tamarensisによって毒化したスペイン, 北海道, 岩手産二枚貝中のこの毒群の比率は低く, C1,C2毒が1〜5%含まれるにすぎなかった. 毒化原因不明の茨城産試料の組成は山口産二枚貝と近似し, 同海域におけるG,catenatumの出現が疑われた. 2)二枚貝のN-sulfonate型毒変換能:二枚貝中腸腺抽出液とC1, C2毒を混合し, 毒の変化を経時的に追跡した. 供試した10種中, バカガイのみに変化が認められ, 未知2成分を生じた. この反応が酵素的に起こり, 単離した反応生成物がdecarbamoy L GTX_2, decarbamoy L GTX_3であることを機器分析で確認した. この酵素はGTX_5, GTX_6もdecarbamoy L saxitoxin,decarbamoy lneosaxitoxinに変換することから, 貝によっては弱毒のN-sulfonate型毒を強毒成分に変換する能力があることを明らかにした. 3)N-sulfonate型毒の毒性, 安定性:C1, C2毒のマウス腹腔内毒性は29, 712MU/umoleを示し, 従来報告されている数値より2, 3倍高かった. また, 投与量・致死時間曲線は公定法に用いられるSTXと統計的に差は認められなかった. C1, C2を人工胃液中でインキュベートした場合, pH1.55, 5時間としう激しい条件下でも, GTX_2, GTX_3への変換率は8%にすぎなかった. 以上の結果から, 現行の麻痺性貝毒の規制値4MU/gをN-sulfononate型毒を多く含む貝に摘要しても問題無いと考えられる.
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