Research Abstract |
放牧条件下の家畜のエネルギー代謝については, 不明な点が少なくない. 牧草地に春から秋まで昼夜連続して放牧されている乳牛育成子牛のエネルギー摂取, エネルギー消費の季節的推移を調べ, 子牛の成長を再現するための数学モデル開発に必要なパラメータを得ることもねらいとして, 牧草生産量, 子牛による採食量, 子牛の行動別熱発生量および体重増加を年間にわたって定量的に追跡した. とくに, 舎飼に比べ放牧子牛の成長が劣るのは, 夏季以降の採食量低下と生産効率の低下にあることを前回の科学研究費成果で示したが, その原因が, 植物側の要因と動物側の要因が絡みあって起こると考え, 放牧下の群落構造, 草質, 分布と, 子牛の行動, 採食量, 熱発生との相互関係に注目した. 結果(1)子牛の体重増加を草地の単位面積あたりのエネルギー蓄積量に換算し, 牧草生産のために投射された日射エネルギーに対する牛体への蓄積量の比(光利用効率)を求めると, 効率値は4月下旬〜5月中旬の春に最高, 次いで6月中, 下旬と9月中旬が高く, 8月と11月は低くなった. この高低は, 牧草の成長速度および子牛の採食量の高低と一致したが, エネルギー流通過程を段階的に分けて変換効率をみると, 段階ごとに異なる傾向があった. (2)子牛が摂取した可消化エネルギーのうち代謝エネルギーとして蓄積された割合(ME/DE)は, 採食量ほどではないが季節的に異なり, 採食量, 増体の季節的傾向と似た変動を示した. ME/DE値は, 0.45〜0.69であったが, ARC(1965)の舎飼条件の0.8よりも常に低かった. (3)放牧時の子牛の行動を5型に分類して24時間中に占める時間数とその間の熱発生をみると, 春は短時間に多く食草し熱発生も高いが, 気温, 日射が高く群落構造も水平葉型, 分散分布型となる夏は, 少しずつ食草して時間は長くかけ熱発生は抑制していることが示された.
|