Research Abstract |
神経疾患へのアプローチのために視覚誘発電位(VEP)を臨床獣医学に導入するため, その検査法の確立を目的として, 基礎的データの収集を行った. 実験には臨床的に健常な, 行動学的に視覚機能に異常を認めないイヌおよびネコを用いた. 麻酔はアトロピンとキシラジンを前投与したのち, ペントバルビタールの静脈内投与を行なった. 記録電極にはエメナル線の釣針電極を用いた. 刺激には閃光刺激を用い, 刺激頻度1Hz, 刺激回数は50回とした. 信号は50,000倍増幅された後, シグナルプロセッサーに接続され, 平均加算の後, オンラインで解析された. その結果, 以下のことが判明した. 1.VEPの記録部位について検討したところ, 最大波形が得られた部位は, イヌ, ネコともに後頭部領域の傍正中であった. 2.VED波形は閃光刺激後100msec以内に, ネコでは3種(P_1, N_1, P_2), イヌでは5種(P_1, N_1, P_2, N_2, P_3)の波形がみられた. 3.閃光刺激強度によるVEDの変化について検討したところ, 強度の増加に伴い各成分の潜時は短縮し, 振幅は増加する傾向がみられたが, 刺激強度0.6Jにおいて飽和傾向が認められた. 4.麻酔後の時間経過に伴うVEPの変化について検討したところ, 潜時はわずかに短縮する傾向が認められたが, 振幅では一定の傾向がみられなかった. 5.幼ネコの生長に伴うVEPの変化については, 17日齢ですでにVEPの発生が認められたが, 成ネコのものに比べ各成分の潜時は長く, 振幅は小さかった. 加齢に伴い潜時は短縮し, 振幅は増加し, 生後約60日でほぼ成ネコのパターンとなった. 以上のことから, VEP検査は今回の麻酔条件下で刺激強度を十分保つことにより, 安定した反応が得られることがわかった. また加齢に伴う変化では, 他の研究者の報告などと考え合わせて, 視覚形成に関する興味深い知見が得られた.
|