Research Abstract |
生後約50日目に左側横隔膜神経を切断したラット横隔膜筋(除神経筋)を術後5日目に摘出し, これを24時間培養した. その培養後の液(CM)を濃縮し, シリコンチューブに充填し, 生後4日目に切断した左側坐骨神経の中枢端を挿入した. 3日に1度の割合で液交換し, 術後2週目にL4-L5レベルで脊髄を摘出した. 摘出した脊髄を半蔵し, 術側と正常側のコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性を比較した. その結果, CMの代りに, 生理食塩水を与えた場合の術側のChAT活性は, 正常側に比べ平均72%に減少していた. CMを与えた場合は, 80%と増大の傾向を示したが有意差はなかった. この傾向は, 除神経しないで培養液に横隔膜筋のCMでも見られ, 除神経筋に特異的ではなかった. この結果に対する一つの可能性として, CMの濃縮液に含まれる運動ニューロン生存因子がごく微量のため有意差が出ないと考えられる. この可能性の検討は, 生存因子に対するアフィニティークロマトが出来れば容易となる. 1984年, Gurneyは, 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者血清が筋から放出される運動ニューロン栄養因子と抗原抗体反応すると報告している. この報告が正しければ, ALS患者のイムノグロブリンを用いて生存因子のアフィニティークロマトが可能であるので, Gurneyの追試を行った. 彼は, CMを電気泳動し, Western blot後, ALS血清と反応させると56Kdaltonのタンパクと特異的な結合が見られると報告しているが, 我々は, 56K以外にも, 48K,64K,76Kに著明なバンドを見た. しかも, 正常人血清を用いた場合にも, 56Kにバンドが見られた. 従って, 我々は, ALS血清を特異的に結合するタンパクを確認する事は出来なかった. (これらの結果は, 国際ALS会議において報告した). よって, 現在, 生存因子濃縮のために, 分子量によって, CMを分画し, それらの効果について, 実験中である.
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