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¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1987: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
ポリADPリボース合成酵素は, 細胞核内に局在し, その酵素活性の変動や阻害剤を用いた解析などから, DNA鎖の損傷修復や細胞の増殖などに重要な役割を果しているものと推測されている. しかしながら, 本酵素の生理的役割については未だ不明な点が多い. そこで報告者らは, 本酵素の役割を解明する手がかりとして, ヒト由来の本酵素蛋白の構造の特質を明らかにし, かつ本酵素に対するモノクローナル抗体を用いて以下の結果を得た. 1)ヒト胎盤由来の本酵素は, DNA結合領域, 自己修飾領域, 及びNAD結合領域の3つのドメインからなり, N末端側からこの順に配列している. 2)NAD結合領域のポリペプチド断片から部分アミノ酸配列を決定し, これをもとにオリゴヌクレオチドプローブを作製して, 本酵素に対するCDNAを単離した. このcDNAから本酵素蛋白の一次構造を決定したところ, 本酵素蛋白はアミノ酸1,014残基から成る単鎖ポリペプチドで, DNA結合領域と自己修飾領域は塩基性アミノ酸に富み全体として塩基性であるが, NAD結合領域は全体として中性であった. 3)本酵素のDNA結合領域には, 癌遺伝子c-fosの遺伝子産物と部分的相同性を示す部位が存在し, かつ種々のDNA結合蛋白に共通して見出されるいわゆるZinc Finger構造を有することが明らかとなった. 4)本酵素に対するモノクローナル抗体のうちの1つは, NAD結合領域内の抗原決定基を認識し, かつ中和抗体活性を有することから, 本酵素の活性中心はNAD結合領域に存在することが強く示唆された. 現在, 培養ヒト細胞内に注入された抗体が核内の局在部位に蓄積する方法を確立しており, 今後, 細胞増殖制御における本酵素の役割を解明する上でこれらの結果が役立つものと思われる.
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