Research Abstract |
従来より, マクロフアージは生体防御機構の一員と考えられていたが, Kellerら(Ann.Surg.1985)やTannerら(Gastroenterology,1981)のマクロフアージによる肝障害性が報告されて以来, その組織障害性の機序が注目されている. マクロフアージは多くのchemical mediatorを放出するが, その中でも活性化酸素とその機能とは深い関連があり, peroxidativeな反応が関与している. 慢性アルコール摂取後ではこれらのperoxidativeな反応の亢進とともに, 活性酸素の産生増加が知られているので, 今回, 慢性アルコール摂取ラットでのマクロフアージの組織障害生について検索した. Lieber diet(5%エタノール含有液体飼料)で6週間飼育し, 慢性アルコール摂取ラットを作成し, 腹腔内マクロフアージを採取した. これらマクロフアージでのperoxidativeな反応を検索する為, malondialdehyde(MDA)産生能をみたところ, 対照に比較して, 慢性アルコール摂取後では26.3%の産生増加があり, さらに, エンドトキシンで刺激すると22.1%のMDAの産生増加をみた. 一方, 肝スライスを作成し, これらマクロフアージとco-incubationしたところ, 肝cytochrome oxidase活性は対照に比較して, 慢性アルコール摂取ラット由来のマクロフアージでは20.0%の活性低下があり, さらに, エンドトキシン添加により, その活性はさらに21.0%低下した. しかし, 培養液中のGOTやGPTなどの遊出酵素には著明な変化を認めなかった. また, MDA産生量と肝cytochrome oxidase活性との相関をみたところ, 低いながらもr=-0.228の負の相関を示した. 以上より, 慢性アルコール摂取後ではマクロフアージ機能は亢進しており, エンドトキシンなどの刺激により, さらに機能的活性化が惹起され, 組織障害性に関与している可能性が示唆された.
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