Research Abstract |
チロジナーゼ(以下Taseと略す)活性陰性白皮症においては, 色素細胞内にTase蛋白がないか, あっても活性のない不完全なTase蛋白であると考えられる. いずれにしても, Tase蛋白の合成や構造を決定している染色体DNAの変異によると想像されるが, 具体的にどの様な異常が起っているのか, 明らかではない. DNAレベルの病因を明らかにする事は, 患者の遺伝問題の解決や将来のDNA治療の道を開くためにも重要な事である. 〔方法〕Tase活性陰性の白皮症とTase活性陰性のHermansky-Pudlak症候群の患者, 及び健常人より得られたリンパ球をそれぞれEBウイルスでトランスフォームし, 継代培養可能な細胞体を樹立した. それぞれの細胞を増強し, そこからDNAを抽出し, 様々な制限酵素(Bam H,Bg I II,Eco RI,Hae III,Hind III,Hinf I,Kpn I,Pst I,PVU II,Sai I,Sma I,Xba I,Xho I9による処理を行った後, Southern-Blottingを行った. そして我々のグループによりクローニングされたマウスcdna(Nucleic Acid Res,85,426,1985)をプローベとして用いて, Hybridizationを行いDNAのポリモルフィズムの決定を行った. 〔結果及び考察〕Southern-Hybridizationの結果より, Tase活性陰性の白皮症において, Tase遺伝子の欠損は認められなかった. また, Taseの構造遺伝子に続く調節遺伝子の欠損も認められなかった. さらに, Tase活性陰性の白皮症及びTase活性陰性のHermansky-Pudlak症候群の患者と健常人との間でDNAポリモルフィズムの明らかな違いは認められなかった. 従って, 患者のTase遺伝子の変異は, 一個のDNAの変異(Point mutation)ないしは脱落による事が始めて示唆された. 今後, 患者及び健常人の染色体TaseDNAのクローニングを行う事により, それぞれの構造遺伝子中の変異DNAを明らかにする予定である. この結果, Tase活性陰性の白皮症の染色体レベルの病因が明らかになると期待される.
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