Research Abstract |
グルココルチコイド(GC)は, feed-backによるACTH分泌抑制以外にも, 他の下垂体ホルモン分泌を抑制し, GC産生過剰症のみならず, 諸種疾患のステロイド療法に当って, 臨床的に大きな問題を生ずる. とくに成長ホルモン(GH)系については, in vivoでは, GCはGH分泌を抑制すると考えられるのに反し, in vitroでは, GCは下垂体からのGH分泌を促進することが知られている. この一見矛盾する現象の機序を解明するために, ラットにおいて, デキサメサゾン(DEX)の, in vivoおよびin vitroにおける下垂体, 視床下部のGH産生系に対する作用を検討した. in vitroに, DEX50nMの添加は, 2日間の下垂体細胞からの, GHRH非添加および添加時のGH放出・合成を促進した. in vivoでは, DEX165μg3日間の皮下注射により, 血中GHの有意の低下とともに, 視床下部ソフトスタチン(SS)含量の有意の上昇および視床下部. GHRH含量の有意の低下がみとめられた. これらの結果から, 薬理的量のGCは, 2〜3日の期間では, 下垂体でGHの合成・分泌を増加させるように作用するが, 視床下部でのSS合成・放出の増加, GHRH合成・放出の減少によって, 全体としては, GH分泌抑制的に作用することが推論された. この視床下部SS合成に対する作用をより直接的に把握するために, 上記と同様にDEXをin vivoに投与したラット視床下部のmRNAを抽出し, ノーザン・ブロッテイングの後, 標識したcDNA断片とハイブリダイゼーションを行い, SSmRNAを定量し, DEX投与ラットでは無処置対照より増加をみとめ, 上記の推論を裏づけた. なお, 上記の過程で, GCの下垂体に対する作用は二相性で, 24時間以内ではGH放出を抑制し, その後, 合成促進がこれを凌駕して, 合成・分泌が促進されることを見出した.
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