Research Abstract |
赤血球, 白血球などの血液細胞と, リンパ球とが共通の祖先細胞に由来することは, in vivoにおける観察からほぼ明らかである. しかしながら, in vitroにおいて, これの直接的 証明は未だなく, この系を開発することは, リンパ球の初期分化を知る上で重要と考えられた. 1.血液幹細胞の純化:S期に殺作用のある5-fluorouracilをマウスに投与し, dormantである多能性幹細胞を残すようにし, さらに従来の芽球コロニー法を組み合わせて, より未分化な多能性幹細胞の集団を得ることに成功した. これらの芽球の約半数は, IL-3とエリスロポエチンの存在下に, コロニーを形成した. 芽球は, T3(-),Lyt2(-),L3T4(-),B220(-)であった. 2.血液幹細胞から大顆粒リンパ球(LGL)の分化:上記の芽球を, マウス腹腔細胞から得たマクロファージ層の上で, IL-2を加えて培養すると2〜3週後に, LGLが選択的に増殖することが明らかになった. これらのLGLは, NK活性を有し, T3(+),Lyt2(-),L3T4(-),As ialoGM1(+),IL-2R(+)であった. また, T細胞リセプター遺伝子γおよびβの再配列を認め, Northern法により, TCRβ よりγが多く発現されていることを認めた. 3.血液幹細胞からのB細胞分化:上記の芽球を, 骨髄ストロマ細胞の上で培養したところ, B220抗原陽性の細胞の出現を認めた. また一部にμ陽性の細胞も認め, この系が, 幹細胞からのB細胞の初期分化を解析するよいモデルになることが示唆された. 今後, B220(+),μ(+)細胞の増幅にいかなる増殖因子か関与するのか明らかにしたい. また, L3T4(+)あるいはLyt2(+)のTリンパ球分化の経路も今後, 明らかにしていきたい.
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