Research Abstract |
【目的】上部開腹術患者に対し, 自動注入ポンプを用いた硬膜外モルヒネ持続注入による術後疼痛管理を施行し, 本法が術後代謝系に如何に影響を与えるかを内分泌系動態を指標として, 通常の鎮痛薬全身投与法と比較検討した. 【研究方法】(対象)37〜70才までの胃切除術施行患者16人を対象とし, 術後鎮痛として硬膜外モルヒネ持続注入を施行した群(硬膜外投与群)8人と, 通常の鎮痛薬全身投与を施行した群(全身投与群)8人の2群に分けた. 両群ともエンフルレン麻酔を行った. (術後疼痛管理法)硬膜外投与群:手術終了予定3時間前にモルヒネ3mgを硬膜外単回投与後, 手術中も自動注入ポンプを用いてモルヒネ4mg/日の速度で硬膜外持続注入した. 麻酔覚醒後, 鎮痛効果が十分なら3mg/日の注入速度に減じ, その後は半日毎に0.5〜1mg/日ずつ注入速度を減量しながら術後3日目まで投与した. 全身投与群:疼痛の程度により, ペンタゾシンなどの鎮痛薬を静注, 筋注で反復投与した. (血漿ホルモン濃度の測定)コルチゾール, ACTH, βエンドルフィン様免疫活性(β-ELI), プロラクチン, 成長ホルモン, インスリン, カテコラミンの各血漿濃度を, 術前日(午前7時), 麻酔直前, 麻酔覚醒時, 術後1日(午前7時, 以下同), 2日, 3日の計6点で測定し, 両群で比較検討した. 【結果】術後1日目以降の血漿コルチゾール, エピネフリン, ノルエピネフリン, ドパミン濃度は, 硬膜外投与群が全身投与群より低値であった. 血漿ACTH, β-ELI, プロラクチン, 成長ホルモン, インスリン濃度は術後1日以後両群とも同レベルであった. 以上より, 自動注入ポンプを用いた硬膜外モルヒネ持続注入による術後疼痛管理法は, 術後疼痛に起因する血漿コルチゾール, カテコラミン濃度の上昇を軽減することが推測され, 本法が疼痛による精神的侵襲を軽減する以外に内分泌の面からも有効な鎮痛法と考えられた.
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