Research Abstract |
古くからラットにエストロゲン(E)を投与すると, 下垂体プロラクチン(PRL)合成が増加することが知られ, 我々はこの増加がPRLmRNAの増加によること及びPRLmRNAのEによる増加がpoly(ADP-riboje)合成の増加を介して誘導されることを明らかにしてきた. 一方, 妊娠・産褥期のラット下垂体においてもPRL合成が増加することが知られているが, その調節機序は必ずしも明らかでない, 本研究は, この解明を目的とした. 妊娠・産褥の種々の時期における血中E:PRL:下垂体PRLをラジオイムノアッセイにより測定すると共に, 下垂体中PRLmRVAをcytoplasmic dot hybridization法により, poly(ADP-ribose)合成を^4C-NADの核内蛋白への取り込みを指標として測定した. また, PRL遺伝子発現に及ぼすpoly(ADP-ribose)合成の関与を検討する目的で, この合成阻害剤であるnicotinamideを投与する実験も行った. ラット血中のEは妊娠初期(妊娠4-8日)に増加し, この時期に一致してPRLmRNAの増加が見られた. この時期にnicotinamideを投与すると, 血中Eの増加は対照群と同様に観察されたが, 下垂体poly(ADP-ribose)合成及び, PRLmRNAの増加は認められなくなり, 妊娠初期のPRL合成の増加QEによる:poly(ADP-ribose)合成の誘導によりPRL遺伝子の転写が増加したためと考えられた. 妊娠中期から後期にかけて下垂体中PRLmRNAは妊娠前のレベルまで低下した. その後は分娩6日目よりPRLmRNAは上昇を示し12日まで負値を維持した. この時期にはE濃度の上昇はみられなかった. 分娩後6-12日のPRLmRNAの上昇は乳子による吸乳刺激を除去するとみられなくなった. 以上妊娠初期のPRL遺伝子発現はEによる調節を受け, 分娩後は吸乳刺激による中枢性の調節を受けていると考えられた.
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