Research Abstract |
我々は, レーザーを照射された生活歯髄に, 第一象牙質様の硬組織が形成されることを実験病理学的に明らかにし, 一方では, レーザ照射による歯原性腫瘍の実験発生の研究を通じて, 発生過程にある歯胚にレーザを照射すると, セメント質の増殖性変化がもたらされることを明らかにしてきた. これらの経験は, レーザが生体の間葉系組織, 特に, 硬組織に対して増殖性変化を惹起する生物学的効果があることを示唆している. 本研究課題では, このようなレーザの生物学的作用を創傷治癒(特に抜歯窩, 骨折などの骨病変)に応用するための 基礎的研究を行うことを目的とする. すなわち, 動物実験により, レーザ照射による骨病変の病理組織学変化を経時的に検索し, レーザの創傷治癒に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 創傷モデルはラットの抜歯窩. レーザは連続波Nd:YAGレーザとGa-Al-As半導体レーザとを用いた. ラットの下顎第二臼歯を抜歯し実験群と対照群とに分ける. 実験群はレーザ照射群で, Nd:YAGレーザ(10W, spot sizeφ2.5mm 0.5秒間照射)ないし半導体レーザ(30mW, spot sizeφ2.5mm, 3分間照射)を照射し, 実験群と対照群を経時的に屠殺し, 顎骨を切り出して通法にしたがって脱灰標本を作成し, 病理組織学的に観察したところ以下のような結果を得た. すなわち, Nd:YAGレーザ照射群では, 照射エネルギー密度の設定が高いためにレーザ照射群では創傷の治癒がかえって遅延する傾向(特に再上皮化の障害)があった. 一方, 半導体レーザ照射群では, 対照群に比較して抜歯窩の治癒の過程において, 明らかな形態学的差異を認めず, 肉芽組織の誘導から再上皮化, 新生骨の形成に至るまで 時間的にもほぼ同じ経過を示した. 現在, 半導体レーザを用いて, 照射条件を変えて創傷治癒過程を変動させるレーザ用量の検索と, あわせて抜歯窩の肉芽組織の生化学的分析(特にコラーゲン線維の分析)による比較検討を行っている.
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