Research Abstract |
成人性歯周患者28名, 年齢31歳〜54歳, を対象として, 1)歯周組織の破壊程度の臨床的およびX線的評価, 2)歯肉縁下プラーク中の特定最近の間接蛍光抗体方による検出, 3)患者血清中の特定細菌に対する特異抗体価のELISA法による測定, を行い, これら3者の関係を検討した. なお, いわゆる歯周病原性最近として評価されているものから, Actinomyces viscosus(AV), Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa), Eikenella corrodens(EC), Fusobacterium nucleatum(Fn), Bacteroides gingivalis(Bg), Bacteroides intermedius(Bi), を特定最近として選択した. これら6種の細菌種の平均検出率はいずれの部位でも総細菌数の5%以下と低かったが, 検出部位率でみるとAr, Bg, Biが高く, AajEcが低かった. 検出者率も同様で, 特にBgは被験者全員から堅守された. 歯周病に対する初期治療を行うと, BgとBiの2菌種の検出率が有意に低下したが, 他の4菌種については著名な変動は認められなかった. 初診時における患者血清抗体価を健常者群と比較すると, Bgに対するものは被験患者全員が健常者の平均価を2S.D.以上越える有意に高い価を示し, 逆にAvに対する抗体価は健常者よりも有意に低い価を示した. 初期治療前後における抗体Av抗体価の有意な変動は認められなかったのに対し, Bgは初期治療後の抗体価が初診時より有意に低下した. 一方, 被験部位をプラーク指数, 歯肉炎指数, ポケット深さ, あるいは歯槽骨吸収率により分類し, 各特定細菌の検出率との関連性を検討した結果, いずれの場合にも相関関係は認められなかった. また(614)/(416)における臨床指数の平均値と抗体価の間にも関連性は認められなかった. さらに, 各菌株に対するIgG抗体価とその菌の検出率との間にも相関関係は認められなかった. これらの結果は, 血清中の特異抗体価は複雑な過程の総合的な結果であって, 病変部局所の状態を直接的には反映し得ないということを示唆していると考えられる.
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