Research Abstract |
プロラクチン(P)がヒト血中で正常濃度を保っている時には, Pは男子性腺におけるテストステロン(T)産生に協調的に作用すると従来から考えられている. しかし, 高P血症が長期に亘って続くと却て間脳-下垂体-性腺系が抑制されることを, 私達のグループを含めたいくつかのグループが確かめている. これとは逆に, ヒト正常男子でPが長期に亘って抑制された時にこの系に如何なる変化が起るかを観察しようとしたのが今回の実験の目的であり, 従来このような実験が国内外てなされたことを私は知らない. 方法としては, 正常男子5人を対象として, 各人に1日5mgのBromocriptine(Br)を2ケ月間服用させ, その間にBr投与前, 投与後2週, 4週, 6週, 8週の5回に亘って, HCG, LH-RHの刺激試験を各人に行い, それぞれ採取した血中T, P, LHおよびFSHをRIAで測定した. データの統計処理は分散分析法によった. 現在迄に得られた結果はHCGに対するTの反応についてのみである. それによると, 血中P濃度はBr服用後2週目から有意に(P<0.05)約50%の減少を示し, 血中T基礎濃度もBr投与前の5人の平均値(8.5±1.4(SD)μg/ml)に6週目(6.2±1.5(SD)μg/ml)から有意に(P<0.01)減少した. 又, HCG刺激に対するTの最大反応値について, 5人の平均値をBr投与前とBr投与後2., 4, 6, 8週とで比べると有意に(P<0.01-0.05)Br投与後の方が減少していた. 尚血中中LH, FSHの基礎値には全実験期間を通じて差が見られなかった. 以上の結果から結論されることは, 正常男子で血中P濃度が正常の約50%減じて6週間以上続くと睾丸からのT産生が一部抑制される可能性が示唆されたことである. 更ら, 正常濃度の血中PはT産生に大事な役割を Permissive effectsとして果たしていると考えて, あまり無理ではないようである.
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