Research Abstract |
本研究の目的は, 現有設備を増設し表面EMGの多現象を同時分析することにある. 臨床的に特に異常を認めない総義歯装着者を対象とし, 開発した分析システムを使用し, 筋疲労現象を検索した. 被験者は, 顔面筋および開閉口筋とし, 双極電極を用いてEMGを導出した. 被験運動は, 義歯の中心咬合位における中程度の強さの持続的な咬みしめとし, 実験的筋の疲労を発現させた. 導出したEMGをポリグラフ(NEC San-ei)を介してデータレコーダー(TEAC XR-70)に収録し, 記録保存した. 開発したソフトを用いメモリー(NEC San-ei:1989)およびフロッピー・ドライブ(NEC San-ei:6606)を増設したシグナルプロセッサーT17(NEC San-ei)に, データレコーダーより再生したEMGデータを取り込み, 周波数分析を経時的に連続して行なわせた. 分析条件はネサンプリングクロック0.5ms, サンブリングタイム0.2sの10回加算に設定した. 本研究で分析した周波数帯域は, 過去の実験で約80%の周波数成分を含有する0〜240Hzとし, その帯域を20Hzごとの12区間に分割して検討を加えた. 被験者4名の結果について検索したところ, 持続的な咬みしめという疲労条件において, 周波数成分に著名な変化が認められたのは, 咬筋浅部および側頭筋前腹より導出したEMGデータのみであった. 咬筋および側頭筋を比較してみると, 筋放電量は, 咬みしめ開始時を100%とすると終了時は, 咬筋の場合は約40〜50%, 側頭筋の場合は約50〜60%に減衰する傾向をしめした. しかし, その推移を見ると, 咬筋の場合は時間経過とともに減衰していくのに対し, 側頭筋の場合は不規則な変化を示した. 一方, 周波数の帯域別に比較すると, 咬筋の場合は0〜40Hzほとんど変化せず, 40〜120Hzが約1/2, 120〜240Hzは約1/3となっていた. 側頭筋の場合は0〜40Hzは咬筋の場合と同様にほとんど変化していないが, 40〜240Hzが一様に約1/2となっていた.
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