Research Abstract |
芋類にも貯蔵蛋白質が存在することが, 最近わかってきた. 食品加工の面でも, パンやケーキに芋類の磨砕汁が添加されるようになり, ジャガイモの蛋白質がケーキの沈みを防止することが見出された. しかし, その機構は明らかでない. そこで本研究では, 芋類の主要蛋白質に着目して, その性質を調べるとともに, スポンジケーキの生地に添加してケーキを焼成し, ケーキの膨化, テクスチャーおよび官能評価に及ぼす効果を明らかにした. ジャガイモ(メークィン), サツマイモ(高系14号), ヤマイモ(イチョウイモ)と里芋から可溶性蛋白質を抽出し, SDS-ゲル電気泳動で分子量を測定した. その結果, ジャガイモの主要蛋白質の分子量は40,000と20,000, サツマイモ24,000, ヤマイモ31,600, 里芋14,300であった. ジャガイモ蛋白質はDE-52のカラムクロマトでMW40,000を主とする(高分子)画分とMW20,000を主とする(低分子)画分に分画し, ケーキの性状に及ぼす効果をみた. ケーキは全卵100g, 砂糖100gと水(対照)又は芋蛋白質66mgを含む水溶液40gをハンドミキサーで14分間撹拌(25°C)し, 小麦粉100gを加えて生地を作り, 160°Cで40分焼成した. 焼成直後と30分後の比容積を測定し, 沈み率を算出した. ケーキの沈み防止効果はジャガイモ, サツマイモとヤマイモの蛋白質に見られた. ケーキの物性(硬さ, 凝集性, ガム性)にはこれら芋蛋白質の顕著な影響はなかった. ジャガイモ, ヤマイモと里芋の蛋白質はケーキのきめを細かく均一にする作用があり, ケーキを口に含んだ場合の感触や官能評価が対照より良かった(P<0.01). ケーキの品質改良効果の顕著であったジャガイモ蛋白質を熱変性させても, その効果がみられたので, 酵素の関与は考えられない. ジャガイモ蛋白質の高分子画分にはケーキの沈み防止効果があり, 低分子画分には官能評価点をあげる(P<0.01)効果があった.
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