Research Abstract |
近年, 「受益者負担」の範囲がますます広がる傾向のなかで, 公共スポーツ施設利用に課せられる使用料の徴収はかなり一般化してきている. 本研究は, この「使用料」に対する地方自治体理事者の考え方を, 議会議事録から明らかにしようとした(調査1). それによると, 昭和30年代には「更に施設を強化するという意味から」(H市)とか, 「そこに相当の施設をし, 相当の管理者を置くということにでもなれば, 他の都市がやっていると同じように, それは負担能力のある人から料金をもらおう」(S市)といった理事者側の答弁にみられるように, 使用料を施設の改善に充てようとする傾向があった. また, S市の「他の都市がやっていると同じように」といった答弁で, 使用料を徴収する自治体(N市, T市, H市)が多いが, 使用料の金額の算定についての説明はない. そして最近になってからは, 団体使用料については工事費を基礎に原価償却額を算出して, それを設定しているが, 個人使用料については「他の市町村(施設)にならって」, 「施設の維持, 管理くらいは利用者の負担で」と決められている(H市, S市). しかしながら, 公共スポーツ施設の人件費・施設維持管理費の支出に対する使用料による収入の比率=収支率をみると(調査2), 体育館の65%, プールの73%, テニスコートの95%, 野球場の75%はいずれも収支率10%未満であり, 維持・管理, にしめる使用料の比率は低く, そのもつ意味はあまり大きくないと思われる. 以上のことを, 都市計画法第75条の「著しく利益を受けるもの」とか「利益を受ける限度」の解釈をめぐって論議がたたかわされている下水道受益者負担金問題と比較すれば, スポーツ活動における受益者負担金は, 安易な目的のために, そして十分論議がつくされることもなく料金が設定される場合が多いといえる.
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