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¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 1987: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Research Abstract |
高度好塩菌に見いだされたバクテリオロドプシンは光プロトンポンプとして働く. 好塩菌の膵小胞懸濁液に光照射すると外液のpHが4pH単位も下がることは前年度までの研究から明らかとなっていたが, この性質を利用して巨大なpH勾配がバクテリオロドプシンの光化学反応に及ぼす影響を調べることを目的に研究を行なった. 研究方法としては, 既用のクロスイルミネーション分光・蛍光光度計を改造し, 強力な反応励起光存在のもとで時間分解吸収・蛍光測定が可能にし, 吸収測定により光反応中間体の生成・減衰過程を調べ, 同時に蛍光測定により膜小胞内外のpH変化を調べた. 膜小胞を用いた実験と並行して, バクテリオロドプシンの2次元結晶である紫膜懸濁液の時間分解吸収測定を行ない, pH勾配が存在しない系での光反応のpH依存性についても調べた. 我々の開発した実験システムにおいては, 従来の閃光法による研究では盲点となっていたサブ秒域の現象が詳しく調べることができ, 紫膜のプロトン放出・取り込み過程に関して新知見を得た. 具体的には, 始状態類似の反応中間体が存在し, その寿命がアルカリpH領域においてプロトン濃度に逆比例して長くなること, その反応中間体自身が別の光反応を起こすことを見いだし, 今まで混迷を極めていた光反応サイクルとプロトン輸送とのカップリング機構を簡明に記述できるモデルを提唱することができた. この新発見に伴ない, pH勾配存在下におけるバクテリオロドプシの光誘起吸収変化の測定結果の見直しが不可欠となり, 再び振り出しに戻って解析が必要であることが判明した. しかしながら, ある特定の反応中間体の減衰過程はpH勾配に依存せず, 別の中間体は細胞質側のpHにのみ強く依存し, 更に別の中間体は膜小胞内外のpHに影響されるなど, 各素過程ごとに異なった性質を示すことは特筆に値する. 膜電位の影響については, 今後の研究課題として残った.
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