Research Abstract |
本研究は, 過去に起こった洪水氾濫被害事象お比較を通して, 被害形態と自然地理条件との関係を明かし, 洪水被害の軽減策をたてる際の一指針を提示することを目的としている. まず, 河川流域の平面形状と平野部の存在形態との関係流域面積3000Km2以下の1級河川について調べ, (1)細長い流域形状をしている河川では, 氾濫原は河道沿いに連なっている場合が多く, 河口付近では急に拡大している, (2)丸い流域形状をしている河川では, 氾濫原は河道沿いにかなり幅広く存在していて, 広い平野部を形成している, (3)両者の中間的な流域形状をしている河川では, 上記2つのグループのいずれかに近いもの, 色々の形態で氾濫原が混在している. という特徴を見いだした. ついで, このような平野部に洪水氾濫が生起したときの氾濫水の挙動を数値シミュレーションによって解析した. 平野部の形態としては, 水平な場合, 河道に向かって一様に低くなっている場合, 河道から遠ざかるに従って一様に低くなっている場合を対象とし, 破堤形式, 全面越流形式, 霞堤形式の氾濫が生じた場合の流況や流体力の平面分布を示すとともに, 相互比較を行って氾濫水による危険の度合の大小関係を明らかにした. 一方, 昭和44年の黒部川水害, 昭和51年の鏡川水害, 昭和50, 56年の石狩川水害の被害状況を, 当時の色々の報告書と新聞記事等によって調べ, 氾濫原の自然地理的条件と被害の形態との関係をある程度実証的に明らかにした. 最後に, 被害軽減策を検討する上での基本課題である何をどう守るかということをリスク分析の手法を用いて解析し, 人命保全に対してはfail-safeの設計原理, 生活保全に対してはsafe-failの設計原理に立脚して諸施策を検討すべきであることを明示した.
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