Research Abstract |
都市における住宅の集合化, 特に高層化の傾向は最近とみに著しい. しかも, 各戸の面積のさして広くないものが多い. このような趨勢にあるので, 大地震時における家具・機器等の転倒による死傷者発生の危険性は, 往時とは比較にならない程増大しているものと考えられる. そこで, 仙台市内に建つ高層集団住宅10棟に居住する世帯を対象に, 家具・機器等の数量と配置の実態, それらの転倒に伴う災害に対する対策の有無等に関する調査と分析を行う一方, 大地震時における家具・機器等の挙動に関する解析を行った. 1.家具・機器等の実態に関するアンケート調査, 回答数は341であった. 家具・機器等を壁に固定している部屋があるか. 家具・機器等の上に物をおかない工夫をしている部屋があるか. 家具・機器等の転倒, 落下物から身を守るコーナーを設けているか. 以上3つの設間に対して, 「ある」と回答したものは, それぞれ全数の17, 34, 26%に留っている. さらに, これらの対策を講じている部屋は何れかとの設間についてみると, 3つの対策とも, 夫婦寝室と居間が中心であり, 物をおかない工夫は子供部屋にもみられる. 次に壁への固定法に関する設間についてみると, 「L型金物で」が66%を占め, 未固定の理由に関する設間についてみると, 「コンクリート造壁のため」が33%, 「固定法, 適当な金物を知らぬため」が34% になっている. 10年前の宮城県沖地震で, 著しい家具類の転倒被害を経験している仙台市内においてさえ, 以上のような状態であり, 啓蒙活動が必要であると考えられる. 2.家具・機器等の地震時挙動に関する解析, 家具・機器等をロッキングする直方体にモデル化し, 床の加速度を正弦波とみなし, これを0.5, 1.0, 1.5波, その周期を0.5, 1.0秒とした時それぞれについて, 家具類の高さ幅比と幅から決る転倒限界床加速度を求め, 震度5近くになると, 高層集合住宅では下階でも転倒が生じることを示している.
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