Research Abstract |
62年の夏から秋にかけて, 日本各地の地すべり, 山崩れ災害地の現地調査と資料収集を実施した. 調査地域は, 長野市地附山地すべり, 長野市茶臼山地すべり, 富山県立山大鳶崩れ, 神戸市丸山断層付近の山崩れ, 長崎県島原半島眉山崩れ, 山形県大綱地すべり, 山形県肘折豊牧地すべり, の各地域である. 現地調査に際しては, 地すべり, 山崩れ災害の被害状況の確認や地質調査に加えて, 過去の災害状況が示された古文書史料や古絵図史料の収集に努めた. 各地の地すべり, 山崩れ災害地においては, いずれも大規模な土木工事(水坂きトンネルや砂防堰堤など)が施され, 二次災害の防止が計られている. しかし, 長野市や神戸市のような都市化が進行している地域では危険個所がかなり残されている. とりわけ, 地附山地すべり地においては, 被害を受けた土地が再び整地されて分譲されようとしており, 被害世帯の補償も全く進展していない状況で, 二次災害の安全性も充分確認されないままに再開発が進められていることは問題である. 文献史料から過去の災害状況を復原すると, 永年災害が継続している場合と, 比較的近年に被害が生じ始めている場合に二分される. たとえば, 長野市の地附山と茶臼山の地すべりは, 江戸後期の善光寺大地震の際は何等影響がなく, より新しい時代に災害が発生している. それに対し, 立山大鳶崩れや島原眉山崩れの場合は江戸時代以来, 現在に至まで被害が続いている. このような災害の継続性と地質との関連に, 今後より注目す必要があろう. そして, それが災害復旧の際の安全性の確認にもつながるといえる.
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