Research Abstract |
河口域ラグーンに形成される汽水性干潟の自然浄化機能を, そこに多発する多毛類の干潟浄化能における役割の観点より評価した. 底泥の有機物分解活性としては, 一段に酸素消費活性や炭酸ガス生成活性が測定されているので, まず七北田川河口干潟から底泥のカラムを, 底泥表層の層構造を壊さないように採取して, 底泥と上水ときガス交換より, 底泥の酸素消費, 炭酸ガス放出活性を測定した. その結果, 七北田河口域干潟底泥の酸素消費活性は平均122mmol/m^2日, 炭酸ガス放出活性は平均166mmol/m^2/日, 炭酸ガス放出活性は平均166mmol/m^2/日の値をえたが, 低泥カラムの間での差が極めて大きかった. 河口ラグーン干潟では, 多毛類のゴカイが最も普通にみられる底生動物であるので, つぎにカラム内のゴカイの現存量と底泥の総酸素消費活性, 総炭酸ガス放出活性との関係を調べた. その結果, ゴカイの現存量と底泥の酸素消費活性および炭酸ガス放出活性との間には, 強い正の相関があることが明らかとなった. すなわち, ゴカイが存在する場合, 底泥の酸素消費活性はゴカイがいない場合の約5倍, 炭酸ガス放出活性では約3倍にも達することが判明した. ゴカイが有機物分解活性を高める場合, ゴカイ自身が呼吸によって酸素を消費し, 炭酸ガスを放出する, すなわちゴカイが直接に有機物を分解する場合と, ゴカイが底泥を撹拌することなどにより, 微生物による有機物の分解を促進し, 間接的に有機物分解を高める場合が考えられる. そこで, ゴカイ自身の有機物分解能すなわちゴカイの呼吸を測定したところ, ゴカイが存在する場合には, 底泥の総酸素消費活性の53%はゴカイ自身の呼吸による活性であり, 26%がゴカイの活動によって微生物の有機物分解活性が促進されたためによるものと推定された. また, 炭酸放出活性においては, ゴカイの呼吸による活性が36%, ゴカイによる間接的な活性の促進が37%になることが判明した.
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