Research Abstract |
周辺部に向けて急速に都市化の進行している広島市一帯をフィールドにとり, 雨水の酸性化のメカニズムを検討し, この雨水に対する土地の理水機能をその利用形態(森林, 農地, 住宅地, 都市工業地域)と関連させて明らかにする目的で本研究を行った. まず, 雨水については広島市内及び市中心部より約10Km南方の江田島で採取し, 都市部とその近郊との対比を行った. また河川への影響については江田島の小河川を取り上げ, 森林区と10年前に起った山火焼失区の理水効果を比較した. 無機イオン類, Ce^-, SO_4^<2->, NO^3_-, NO^2_-はイオンクロマトグラフで, Na^+, K^+, Mg^<2+>, Ca^<2+>は原子吸光法で, NH^4_+は比色法で, Hg, Asについては原子吸光法及び化学発光法で定量を行った. まず, 海塩由来が主な塩素イオンを指標に, 雨水中の硫酸及び硝酸濃度を対比させることにより,硫酸・硝酸の大部分が人為起源汚染物質であり, 天然由来は数%以下に過ぎない事を明らかにした. 降雨を初期雨水と後続雨水に分けた場合, 広島市中心部では後続雨水中でも硫酸や硝酸イオン濃度が突如上昇する現象が見られた. これは降雨強度が低下した時に見られ, また郊外の江田島では観測されなかった. これは全体として雨水中の陰イオン含量が気団の動きを反映しているものの, ローカルな効果も加わることを示している. また上記の陽イオン及びH^+と陰イオン類の総量でイオンバランスがとれている事も確認した. 少くとも広島地方に限って言えば有機酸等の雨水への取込みは考えなくてよいと云える. さらに大気中の水蒸気をドライアイス温度で凝集させて, この凝集水中の硝酸, 硫酸, ヒ素濃度を調べた. この結果は天候と関連し, 曇天か降雨時の方が高い濃度で検出され, 雨水のwash out効果は地表では現われない事がわかった. 大気中水銀についても同様の結果が得られた. また河川水中陰イオン濃度の変動が, 山火跡地と森林で異なる事もわかり, さらに検討中である.
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