Research Abstract |
エネルギー危機が叫ばれて以来様々な太陽電池が研究されてきたが, 石油の代替エネルギーとしての太陽電池には, 高効率, 低コスト, 大量生産が容易という条件が不可欠である. こういった条件を考慮した場合, 一方向凝固多結晶シリコンは非常に有望であるが, より一層の高効率化と低コスト化が必要である. そこで本研究では効率を左右する因子として結晶中酸素, 炭素とその析出や結晶欠陥などの挙動を考え, それの解明のため比抵抗, 酸素, 炭素濃度, ライフタイムの測定により, 一方向凝固多結晶型インゴットの特性評価を行った. また, ウェハーの熱処理による影響を調べ, インゴットが受ける熱履歴が効率に与える影響について検討を加え, さらに高効率, 低コストなインゴットの製造プロセスの基本原則の確立を目指した. その結果, インゴット底部では欠陥は少ないが酸素濃度が高く, 酸素の析出がライフタイムの低下と効率の劣化を招いていることが分った. またインゴットの周辺部も鋳壁から結晶が成長するため結晶欠陥が多く, 鋳壁からの柱状晶とチルから柱状晶がぶつかる付近で転位が多く発生しており, インゴットの健全性の低下を招いている. そのため, より高効率のインゴットを得るには格子間酸素濃度を減らす必要があり, 溶解および凝固時の酸素の混入を極力防止する対策が必要である. また, 凝固開始, 鋳壁部における結晶成長法の改善も必要である. 熱処理により1000°C以上の温度域では2時間以上保持されると, 効率の劣化を招くことが明らかになり, また酸素濃度を減少させると熱履歴の影響を受けやすいと考えられるので, 凝固後は出来る限り急冷する必要があると考えられる. また, 熱処理により効率は劣化したにもかかわらず, 粒界ではライフタイムが非常に増加した. 今後は高効率インゴット作製のため, 熱処理時の粒界での挙動の解明と, 効率劣化の機構の解明が必要である.
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