Budget Amount *help |
¥5,000,000 (Direct Cost: ¥5,000,000)
Fiscal Year 1987: ¥5,000,000 (Direct Cost: ¥5,000,000)
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Research Abstract |
特定の細胞集団に対して特異的親和性を有する材料は, 生命科学分野における新素材の中でも特にその発展に大きな期待が寄せられており, その開発のための方法を確立することは材料科学における最重要な課題の一つである. このような材料の分子設計にあたっては, 細胞の挙動と材料物性との関係を定量的に解析し, 最適な分離・認識機構の発現をもたらしすように, 材料の分子設計と表面構造の制御を行なうことが必要である. 本研究においては, イオン性相互作用に基づいて細胞と特異的相互作用を示すことが期待されるアミノ基を有する種々の高分子材料を設計し, リンパ球の2大亜集団であるB細胞とT細胞との簡便かつ迅速な分離法として吸着クロマトグラフィに着目して検討を進めた結果, ポリアミングラフト共重合体(HAx)が, B細胞に対する高い選択吸着能を有することを見いだし, この共重合体をビーズ状吸着体とする分離システムの開発に成功した. すなわち, HA13カラムを用いて, ラット腸間膜リンパ節リンパ球の分離を行なうと, カラム中にはB細胞が選択的に吸着し, 流出フラクションとして, 純度95%以上のT細胞をほぼ回収率100%で得られることが明らかとなった. また, B細胞は脱着フラクションとして得られ, その純度は90%以上, 回収率は85%であり, 充分実用上の分離が達成されているものと判定された. 分離には, (1)ポリアミン鎖のプロトン化度, (2)プロトン化度変化にともなうポリアミン鎖の溶存状態の変化, (3)吸着体表面に形成されるミクロドメイン構造の状態という3つのファクターが重要であり, この3つのファクターを制御することにより, 膜表面のイオン的性質の異なる細胞間の効率的な吸着分離システムの開発が可能であることが期待される. さらに, 一定のせん断応力下で経時的に細胞の接着強さを測定できる新しい方法論の確立にも成功した.
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