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¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 1987: ¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
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Research Abstract |
P位を種々の官能基で置換した芳香族置換リン酸基を有する新規なメタクリラートを合成した. これらのモノマーを用いてボンディング剤を作成し, 片歯に対する接着特性を検討した. 官能基としてメトキシ基を有するモノマーでは従来の接着様式とは異なり, エッチング剤で処理することにより象牙質に対する高い接着強さが得られた. このことは, エッチング剤による処理で起こる象牙質コラーゲンの高次構造変化と接着強さとの間には関係がないことを示唆する新しい知見である. 象牙質に強く接着した試料について, 走査型電子顕微鏡により接着界面の観察を行うと, モノマーが象牙質中に含浸し硬化したハイブリッド体(樹脂含浸層)の形成が確認された. この樹脂含浸層の形成構造としては, 脱灰された象牙質表層へ, モノマーがポリマーに成長する前に拡散, 浸透し, そこで重合するものと考えられる. 疎水性基と親水性基を同一分子内に有するメタクリラートは, 生体組織との親和性が良いためモノマーの象牙質への拡散を促進する. また脱灰した象牙質のモノマー透過性を向上させることも, 安定した樹脂含浸層を形成する上で重要であることが明らかになった. 象牙質に生成した樹脂含浸層の耐酸性は, 樹脂含浸層の組成, すなわちポリマー含量やその性質に左右される. 事実, 官能基としてメトシキ基を有するモノマーを添加した場合の方が, 従来より用いられている4-メタクリロシキエチルトリメリット酸無水物を含む場合よりも優れた耐酸性を示した. 以上のように本研究では, 象牙質にポリマーを強く接着する方法, 特に従来より用いられている不安定な重合開始剤を必要としない系や耐酸性のない象牙質表面に優れた耐酸性を付与する方法が見い出された.
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