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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1987: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
高分子物質の化学構造からそれが固体状態で示す力学的・電気的極限性能を分子理論に基いて予測する研究の一環として, 今年度は超延伸高弾性率高分子繊維の力学的性質と分子変形機構の解明に重点をおいて研究を行なった. 繊維の延伸過程における分子歪と分子内ポテンシャルの応力・温度依存性(非調和ポテンシャル)を張力下における赤外・ラマンバンドの波数シフトによって測定し, この振動数データに基いて格子力学計算により分光学的な弾性定数(以下, 計算値と呼ぶ)を求め, これを結晶弾性率(X線解析法により測定)あるいはバルク弾性率の実測値と比較検討した. 試料としては数mm大の単結晶が得られるポリジアセチレン(poly DCHD), およびポリエチレン(PE)とポリオキシメチレン(POM)の超延伸繊維を用いた. いずれの場合にも分子鎖の骨格に関する振動モードのみが引っ張り応力によって大きな波数シフトを示すこと, また高温ほどシフトの程度が大きいことが見出されたが, これは分子変形の理論計算の結果とよく対応している. 弾性定数の計算値と実測値を比較すると定性的にはよく一致しているが, 理想的なpoly DCHD単結晶の場合でも後者のほうが荷重による弾性定数の低下が著しく, しかも高温ほどその差が顕著になることが示された. POM繊維の場合, 室温付近では結晶弾性率の実測値は計算値に比べて30%小さいが低温になるにつれて次第に計算値に近づく. これは-100°C以上の温度でPOM結晶中に生ずる分子の回転ゆらぎによるものと考えられる. また, X線回折法で結晶弾性率を求める際に, 従来用いられている単純な応力均等分布モデルに代ってより実在の状態に近い複合力学モデルが適していることを明らかにした. 今後は分子内非調和ポテンシャル関数の具体的な評価, 分子の熱的ゆらぎの効果について詳細な検討を進める.
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