Research Abstract |
本研究は, 地上の固体表面分析装置として既に実用化されている二次イオン分析法(SIMS)を, 探査機による固体惑星表面遠隔探査に応用するための基礎開発研究である. 本年度前半では, 既設の小型真空槽の壁面フランヂにイオンビーム装置(最大出力1, 5RV, 50mA)及び二次イオン分析装置を装着して実験を行った. 試料と二次イオン分析装置の距離は約40cmに設定した. 試料としては, Al, Fe, Cuを用い, Arイオン, O_2イオンを照射して, それぞれの試料イオンが正しく検出されることを確認した. 二次イオンの検出量は, ビームエネルギーとともに増大するが, 一次イオンは逆にエネルギーとともに減少した. 二次イオン収量は, 試料と装置が近接(ミリメーター程度)している市販のSIMS装置で得られているデータから予測される量とほぼ等しく, この方法を惑星表面遠隔探査に応用することが原理的に可能であるとの見通しがえられた. 試料が絶縁物(アクリル)の場合についても実験を行い, イオンビーム電流と同量の電子電流をイオン銃出口で付加することにより, 帯電の影響を受けることなく, 正しいSIMS特性が得られることを確認した. 本年度後半では, 科研費で購入した小型専用真空槽を用いて高真空度での実験を行った. この装置を用いた実験では, 前述の装置の場合に比べて, チェンバー内残留ガスの悪影響がなくなり, 純度の高い二次イオン特性が得られるようになった. 試料としては, Al, Fe, Cu以外にも, 二次イオン発生効率が小さい炭素についても実験を行った. 更に現在は, 地上の岩石, 隕石についても実験を行っており, Si等主要成分について検出に成功している. 今後, 小惑星, 月表面を構成している元素を用いて標準試料を作り, その二次イオン分析を行って定量分析を行うとともに, 試料と分析器との間の距離を2m程度迄広げた遠隔SIMSの研究を計画している.
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