Research Abstract |
本研究では, 1.ポリビニルアルコール(PVA)のCu(II)錯体系のさらに詳細なキャラクタリゼーション, 2.PVA-Fe(III)錯体系のキャラクタリゼーション(日本化学会第56春季年会(1988)講演予定(横井, 柳下, 栢分, 杉山)), 3.磁性体超微粒子の高分子複合体合成(同上年会(1988)講演予定(柳下, 川合, 横井))について以下のような研究成果を得た. 1の項目では, pH213の高アルカリ性で初めてPVA水酸基のプロトン脱離がおこること, 脱水過程の熱分析解析結果から, 緑色のPVA-Cu(II)錯体に関して, PVAによる水酸化銅(Cu(OH)_2)の包接の事実が明確に再確認できたこと, このCu(OH)_2の磁化率は遊離のCu(OH)_2のものとはかなり相違することが, 判明した. また, これらの研究過程で, PVAがNa_2So_4結晶を高収率で捕集する機能をもつという珍しい事実も明らかにされた. 2の項目では, PVA-Fe(III)錯体系も, 基本的にはCu(OH)_2の場合と同様に, PVAによるFe(OH)_3の包接錯体であることが, ESR, 磁化率のpH依存性から明らかにされた. しかし, 溶液の粘度のpH依存性はかなり特異であり, 詳細な^1H-NMR測定結果を中心にして, 次のような錯体構造を推定した. すなわち, Fe(OH)_3は三次元的にかなり大きな粒子としてPVAに取り込まれるが, PVA鎖による包接はやや不完全なもので, バルクの水分子がある程度はFe(OH)_3粒子に接触できる状態にある. 3の項目では, 磁性体超粒子の高分子複合体を合成することが目的であり, 手始めとして, マグネタイトと種々のフェライト超微粒子のPVA包接体の合成を試み, 最適合成条件探しの研究をおこなった. これにより, 従来では想像もされないような多くの新事実が見出された. 以上のように, 本研究課題の物質系の興味は, 基礎と応用の両面で, ますます拡大されており, 今後とも, この方面の研究を強力に推し進めていきたいと考えている.
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