Research Abstract |
光受容・膜タンパク質における電荷移動を実時間(>μs)で検出・記録することが本研究の目的である. 以下の測定手段を開発・応用中である. 手段 (0)pHガラス電極による方法 (1)pH指示薬による溶液pH変化の検出(タンパクと溶液とのH^+交換の検出) (2)脂質平面膜法による, タンパク内およびタンパク表面での電荷移動の直接検出 (3)ISFET(イオン選択性電界効果型トランジスタ)によるイオン濃度変化の実時間検出 各方法の特徴と主な結果 (0)pHガラス電極それ自身は応答が遅いため, 時間分解の実験には適していない. 但し, 特別な条件(例えば, 光照射によるH^+ポンプの結果が蓄積されるbRリポソーム系)では, 照射する光のタイミングを制御することによって, ミリ秒以下の現象の解析に応用することが可能であった. (3)ISFET法は, 上のpHガラス電極法の変法であるが, 素子それ自身の応答が圧倒的に速い. モデル反応を利用した実験から, この素子は数ミリ秒以下の速さのpH変化(<0.05pHユニット)を忠実に検出できることがわかった. ISFETを光受容・膜タンパク質の研究に応用するときに障害となるのは, 素子が光に直接反応することである. 光刺激部と検出部とを分離し, フロー法を併用するシステムを製作中である. (1)pH指示薬法は, pH変化の実時間検出には最もオーソドックスな方法であり, 時間分解能も高い. しかし, 装置がやや複雑となり, 測定操作も煩雑であるという欠点がある. 一種類の指示薬がカバーできるpH範囲も狭く, その副作用が懸念される場合もある. 限界を弁えて応用すべきであろう. 我々は, この方法を利用して, H^+のbRへの結合過程(H^+ポンプの最終ステップ)と, bRのUV吸収変化(芳香族アミノ酸近傍の蛋白構造変化)とが速度的に完全に一致していることを見いだした. (2)脂質平面膜法は, 時間分解, 測定感度共に高く, 蛋白内電荷移動をその向きも含めて, 直接検出・記録するのに有効な方法である. 外部電源からポテンシアルを任意に加えて実験できるという点では, この方法に代わるものは無い. しかし, 装置に市販品が無く完全自作しなければならないこと, 操作・手順に依然として, "名人芸"的な要素が残っている点など, 一般的な手法とは言えない面もある. 我々は, 脂質平面膜にbRを結合させ, 外部電圧によってポンプが制御されること, ある場合にはポンプが逆転することを見いだした.
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